偶然見かけたから、もしかしたら持ってるかもしれない、と思って声をかけた。
「…テッドさん」
「何だよ」
 返ってきた不機嫌そうな声に、フィナは思わず口ごもる。
「…………」
「おい」
「………………」
「…フィナ?」
 苛立ちを幾分か抑えて問う声音に、フィナはそれでも戸惑いながら口を開く。
「……。おくすり、持ってないですか…?」
「…持ってるけど」
 思ってもいなかった言葉に、テッドは少し驚きながら、それが? と目で問う。
「…あの…」
「…何だよ」
「…………」
 何と答えればいいのかわからなくなったのか、うつむいてしまったフィナに、テッドはため息をついた。
「……。お前、な」
「…はい」
 ごそごそとポケットからそれを取り出して、ポンッとフィナの手に握らせた。
「口下手なとこ、もうちょい直せ」
「……」
 あ、と声をかけようと顔をあげたときにはもう、テッドは背を向けていて。
 フィナは、結局見えなくなるまでテッドを見送ることしか出来なかった。
 それから手の中のものを見て、驚いた。
 これ、おくすりじゃない…。




 次の日。
 フィナは、胸の前でギュッと手に力を入れて、彼に声をかけた。
「…テッドさん」
「何だよ、またか?」
 返ってきたのはうんざりしているような響きで、フィナはやっぱり、つまってしまった。
「…………」
「…ちゃんとしゃべれ」
「ご、ごめんなさい…」
「謝れなんて、言ってない」
「……」
 つっけんどんなテッドの言い方に、目の奥が熱くなるのを感じた。
「…お、おい」
 ぎょっとしたのはテッドだ。
 どうして泣きそうになるんだかさっぱり解らない。俺か、俺が悪いのか!?
 どうすればいいのか解らなくてオロオロしていたら、通路を曲がってタルがこちらを発見した。
「あーーー! お前、何フィナ泣かしてんだよ!」
 ダッと駆け寄ってきたタルに、テッドはブンブンと首を振る。
「泣かせてない! フィナが勝手に…」
 フィナは、ホッとしたようにすぐ隣に来たタルを見上げた。
「タル…」
「どうしたー何かされたのかー?」
 頭をなでながらフィナにそう問うのに、テッドはムッとする。
「何もしてない!」
「……」
「ん?」
「この前の…」
「ああ。なるほどな」
 フィナのたったそれだけの言葉で、いったい何が解ったんだ、と驚くテッドに、タルはやっぱりフィナの頭をなでながら言う。
「あのな、フィナはお前に礼が言いたいんだよ」
「じゃあ普通に言えばいいだろ…。何で黙るんだよ」
 もっともな事を言ってはいるが、テッドはただ腹の底がムカムカしていてそれに任せてしゃべっているだけだ。
「こいつが口下手なの知ってるだろ? その辺はこう、さ。うまく悟ってやんねーとさ」
 な、とフィナに笑いかけるタルに、強い調子でテッドは言う。
「あの、とかでわかるわけないだろ!」
「ご…ごめ……」
 ビクッとして、思わず謝罪をしそうになったフィナに、先ほどまでのタルに対する態度との違いに、カッとなって怒鳴る。
「俺は謝れなんて!」
「……ぅっ」
 ギュッと目をつぶって、耳を押さえてしまったフィナを抱き寄せてよしよしとなでながら、タルが困ったようにテッドに言った。
「ど、怒鳴るなよ! ああもう…」
「……なんでそこで泣くんだよ…」
 テッドはもう、どうすればいいのか解らなかった。
 左手で顔を覆ってため息をつく。
「フィナはでかい声とか苦手なんだよ。ああほら、泣くなって」
 そう言うタルの胸にギュゥっと抱きついて震えるフィナに、それは少し、申し訳ないことをした、と思った。
「……」
 けれどもやっぱりなんか、ムカムカしてくる。
「…話にならないな」
 これ以上この場にとどまるなんてできなくて、テッドはクルリと2人に背を向けた。


 遠ざかる足音に顔をあげたフィナだが、小さくなる背中に声をかけることはできなかった。
「…、…っ」
「…」
 タルは、ゆっくりとそんなフィナの頭をなでてやる。
「……タル……」
「…ほら、泣き止めよ、な?」
 優しいタルの声に、コクンと頷く。
「……うん」
「…大丈夫だって。フィナのこと嫌いになったわけじゃねーよ」
 しかし、続いたタルの言葉にそれを想像してしまって一度は止まりかけた涙がふかりと浮かんだ。
「…ぅ…」
「あーあー! 何でまた泣くんだよっ…ああもう」
 しょうがねぇなあ、と言いながら、タルはフィナの肩を支えながらとりあえず人目につかない、フィナの部屋へと歩き出した。




 一方、自分の部屋に戻ったテッドは頬杖をついてムスッとしていた。
「なんだよあいつ」
「すぐにぴーぴー泣きやがってさ…」
「ってか、なんでタルはフィナがなんも言わなくてもわかるんだよ」
 ブツブツ独り言を言うテッド。
 部屋は、悲しいくらいに物がない。以前フィナが持ってきた造花だけが、部屋に色を保たせていた。
「…まだ泣いてんのかな…」
 ふるりと悲しそうな桃色のそれは、水の入っていない一輪挿しで悲しげで。
「謝りに…いや、やめとこう」
 テッドは、何度も何度も、立ち上がりかけてはまた椅子に座った。




 部屋にたどりついても、フィナの涙はなかなか止まらなかった。
 タルはずっとずっとフィナをよしよしとなでてあげていて。
「ふう…」
 さきほど、ようやくタルの胸にもたれかかって眠った。
「フィナ、話が、…」
 コンと短いノックの後、返事をする間もなく開いた扉から覗いた顔に、タルは慌てて頭を下げる。
「あ、すんません。今寝たトコで」
「かまわん。…泣いていたのか?」
 タルの胸にもたれかかって寝息をたてているフィナを見おろしながら言うキカに、あいまいに頷く。
「え、あ…まぁ。ちょっと」
「…別に根掘り葉掘り聞きはせん。…最近ろくに睡眠をとっていないようだったから…ちょうどいい」
「………」
 キカの目が、優しい色を帯びたのにタルが驚いていると、キカがスッと扉の向こうへ消えた。
「また、後で来よう」




 あれから何度繰り返したか、やっと意を決して、今度こそテッドは立ち上がった。
「……やっぱ、謝りに行こう。後腐れはないようにしたい」
 呟いて、部屋から出る。
 パタンと扉の閉められた部屋には、桃色の花だけが残った。




 フィナの部屋の前で深呼吸して、テッドは扉を開いた。
「フィナ、さっきは…」
「あ…」
「…寝てるのか」
「ああ」
 ベッドに寝かせて、フィナの髪を梳きながら答えるタルにテッドはまた、ムカムカした。
 さっきまで泣いてたくせにのんきに寝てるのか!?
 テッドは、やっぱり謝らないでおこうと思いなおしかけたが。
「泣き疲れてな」
「え?」
「…あんたに嫌われたらどうしよう、だってさ」
 涙の残る目じりをぬぐってやりながら、タルが言うのに、テッドは目をそらした。


 フィナの小さな寝息だけが聞こえていた沈黙に耐えられず、テッドがもごもごと言った。
「…そいつに、一応。一応だぞ。…ごめんって、言っといてくれ」
 テッドの言葉に、タルは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにニッと笑った。
「嫌だね」
「何でだよ!」
「自分で言えよ、そーゆー事は。じゃ、ここ頼むわ。俺用事あるんだ」
「な、ちょっと待て…!」
 慌てたテッドの前で、しかし無情にも扉はバタンと音をたてて閉まった。
「…どうしろってんだよ…」


「……」
「…」
 すよすよ眠るフィナ。とりあえず、テッドはベッドの傍の椅子に座った。
「…」
 こうして寝顔をみていると、いつもよりももっと幼く見える。
 なんだか、寝てるとかわいいな…。ほとんど無意識に、テッドはフィナの頬に手を伸ばしていた。
「!!」
 が、途中で自分が何をしているのかに気づいてバッと手を引っ込めた。
 誰もいないのに、思わずキョロキョロと周囲を確認してしまうテッドだった。

「……」
 自分で言えとタルは言ったけれど、寝てるのにどうやって言えばいいんだ。
 そわそわと指を動かしながら、チラチラとフィナを見る。
「…ん…」
「っ!?」
 そのとき、もぞっとフィナが動いた。
 ゆっくりとした動きで、目をこする。
「タル…おはよ…?」
「……」
「!! ……あ、あの」
 やっぱり「あの」しか言わないフィナに、テッドは心の中でため息をついた。
「…テッド、さん」
「え?」
 しかし、次には自分の名前を呼んだフィナに驚く。
「……あの…」
「…」
 けれどもなかなかそこから続かない。テッドは、またか…と今度こそため息をついた。


 このままでは埒が明かないと判断したテッドは、ぷいっとフィナから目をそらして言った。
「…悪かったな」
「…?」
 何が? とでもいいたそうに首を傾げて見上げてくるフィナに、テッドは頬に熱が走るのを感じた。
「…」
「…あ、の…」
 フィナが何か言いかけたが、テッドはとにかく顔が赤いのを見られたくなくて立ち上がった。
「…それだけだ。俺はもう行く。じゃあな」
「! テッドさん!!」
 しかし、思いのほか強い調子で名前を呼ばれて、足を止めた。
「…なんだ」
「あの…」
「……」
「…あの、ごめっ、なさ…」
 謝罪の言葉を口にしたフィナに、テッドは振り向いて呟く。
「俺、謝られる覚えないけど」
「…あ、の…」
「……」
 何か言いたげで、だけれど言葉がでてこないフィナにハァと溜息をついて、テッドは自分から、歩み寄った。
「…フィナ」
「……?」
「お前は、俺におくすりはないかって聞いたよな」
「……」
 コクリとフィナが頷いたのを確認して、続ける。
「・・それで、俺はお前に、て・ち・が・いで、特効薬渡した」
 手違い、のところを酷く強調しながら言うテッドに、フィナはコクコクと頷く。
「…それで、お前は、なんて俺に言いに来た?」
 さあ、これなら答えれるだろ? と問うテッドに、フィナはそれでも困ったように視線を動かした。
「……」
「……」
 それでも、どうにかやっと、フィナが口を開いた。
「…ありがとう、って」
「…どういたしまして」
 たったそれだけのことを言うのに、どれだけ時間がかかったんだ。
 テッドは、なんだか不思議な思いだった。


「じゃあな」
 今度こそ部屋を出ようとしたテッドにまたもフィナが声をかけた。
「あの!」
「…まだ何かあるのか?」
 テッドは、律儀にフィナを振り返る。
「…あの…」
「……」
「…ご飯…」
「…は?」
「…えっと…」
「…」
 テッドは、気長に待つことにした。
 …少し慣れてきたのかもしれない。フィナの、一生懸命搾り出そうとする姿勢に。

「…あの、ご飯…を」
「…ああ」
「…一緒に…」
 フィナは、顔を赤くして俯いた。
「…」
 ご飯、一緒、この2つの単語で連想するのは、食事のお誘いを受けているということくらいだ。
「……えと、えと…」
 まだ何かもごもご言おうとしているフィナに、テッドは背を向けて言った。
「…行くぞ」
「え?」
「飯。一緒に食うんだろ?」
「あ…う、うん!」
 フィナはパッと明るい声になって、ベッドからおりた。



 ひどく嬉しそうに、少しだけ後ろを歩くフィナを感じながら、なんで俺はこんなのに付き合っているのだろうとふとテッドは思った。
 それでもフィナは笑っているほうがかわい…。
「だから違う!」
「っ!? あ、あの?」
「あ、すまない。ちょっとな」
 つっこみを盛大に声に出して言ってしまい、テッドはあいまいに濁した。
 フィナはそれ以上深く問うことはなかったが、不思議そうに、少し不安そうにテッドを見ていた。
「…」
 これじゃあ俺、変なヤツじゃないか!!
 テッドは頭を抱えたい衝動にかられたが残念ながらそれはできなかった。
「…」
 それからふと、テッドはあることを思った。
 確か、フィナはリーダーだったはずだ。しかし、大丈夫なのだろうか、こんなに口下手で。
「…??」
 スタスタ歩くテッドが突然クルッとこちらをむいて、ジッと自分を見おろしてくるのを、フィナは困りながら見上げる。
 ジィっとフィナを観察しながら、テッドは思う。
 目はでかいし、背も高くないし細いし…。
 すぐ泣くし。人見知りだし。
「…?」
 フィナは、やっぱりそんなテッドを困ったように見上げるしかできなかった。
 テッドはフィナの困惑など知りもしないで、うーんと悩んでいた。
 ほんと細いし…小柄…それとも、着やせするとか?
 テッドは、思った事はそく行動に移す癖があったりする。
 そんなわけで。
 ぎゅ。
「……!?!?」
「…やっぱほっそい。もっと食え」
 ぎゅう、と抱きしめながらそう言うテッドに、フィナはほとんどパニック状態だ。

 と、そこへ地をはうような声が聞こえてきた。
「…あんた、何やってんだ」
「あ…タル」
「…こいつ、細すぎないか」
「…確かにフィナは細いけど。それとあんたの行動は、関係ないだろ!!」
 タルは引き剥がすようにべリッとフィナを奪い取った。
「ったく。用事が済んで来てみりゃこれだもんな…」
 油断も隙もあったもんじゃない。
「タ、タル…」
「フィナ、変なことされなかったか? いや抱かれてただけでも十分変だけど」
 ぎゅうぎゅうとフィナを抱きしめながら、タルが言う。テッドはむっとして言い返す。
「変な言い方するな! 誰もこいつなんか抱いてない!」
「抱いてたじゃないかよ! 今! ここで!!」
「あ、あ…」
 フィナは2人の間(正しくはタルの腕の中で)困ったように2人を見比べる。




 3人は失念していた。
 ここが、誰もが通る通路だということを。
 偶然にも通りかかったシグルドとハーヴェイは、フィナをはさんで言い合うテッドとタルを見てしまった。
「…ハーヴェイ」
「…何だよ」
「…どうする?」
「…どうするもこうするもよ」
「…退散するか…」
「……。おう」
 結局2人は、もと来た道を戻り始めた。


「フィナも! 嫌ならちゃんと言え!」
「…あの、でも…」
「俺は別にやましい気持ちなんてこれっぽっちも持ってない!」
「フン、どうだか。大体、お前怪しすぎるんだよ!」
 言い合いはどんどん酷いものになっていって、だけれどフィナにそれが止められるはずもない。
「…タル、テッドさん…っ」
「ああ?俺だって大してここにいる理由もない。出て行ってもいいんだぜ?」
 しかし、テッドの言ったその言葉に、フィナは力いっぱい叫んだ。
「タル!! テッドさん!!!」
「……」
「……」
 突然のフィナの大声に驚いた2人は、言い合いをやめてフィナを見る。
 フィナはくしゃりと顔を歪めて、一目散に去っていった。




「…っ」
 どこをどう走ったのか覚えていない。ただ、気づいたら甲板の端っこに立っていた。
「……」
 泣くな。泣いたりしちゃだめだ。
 フィナはぐいぐいと目をこする。
「…、?」
 と、その手を誰かに取られて驚いて顔を上げた。
「何をしている。…泣いていたのか?」
「キ、カ…さん」
「どうした」
「……」
 少し低い、それでも通るキカの声にフィナは泣きそうに笑った。
「なんで、も…」
「その顔がなんでもない顔か」
「…」
 フィナは、ああだからこの人は、船長なんだ。ふとそんなことを思った。


「…おい、なんで今度はここに、しかもキカさまといるんだ」
「…さあ」
 ハーヴェイとシグルドは、先ほど見かけたフィナをまた見かけて、首を傾げた。


「ほんと、ほんとに…何でも、ないです」
「…。テッド、と言ったか…アイツか?」
「…え…」
 何で? と言いたげな顔になったフィナに、キカはなんとなく言った名前が当たったことを知る。
「…いや、いい。ほら、顔を拭け。話したくないというのなら、無理には聞かん」
キカはそう言って、ハンカチを差し出した。
やっぱり女の人なんだなぁ…。
フィナはこっそり驚いたりしていた。
「…ありがとう、ございます」
「構わん、気にするな」


 そんな2人を物陰から覗いていたシグルドとハーヴェイは、こそこそと会話をする。
「うっわ! キカ様男前…!」
「ハーヴェイ! 失礼な事を!」
「だ、だってよ…フィナ、あいつちっこいし」
「フィナ様と呼べ。まあ…キカ様より、確かに低いが…」
「それに、なんか可愛くね?ほそっこいしさーー」
「……」
 シグルドは否定しなかった。


 そういえば、と、キカが話を変えるように言った。
「お前はもう食事は済ませたのか」
「あ、…いえ…」
 そういえば、せっかく食事にテッドを誘ったのに…。
 フィナはまた少し泣きたい気持ちになった。
「まだならば一緒にどうだ」
「あ、…あの…」
 フィナは困ったように、ハンカチに視線を落とした。


「うわ、キカさまがナンパ!」
「したくなる気持ちは判るがな」
「…今なんつった、シグルド」
「…別に何も言っていない」
「…」
「…」
 2人の間に、妙な沈黙が流れた。


 覗かれているなんて露ほども思っていないフィナは、何度も何度もつっかえながら、口を開いた。
「…あ、あの…」
「? どうした」
「ご、ごめんなさい…! 約束、してて…」
「……」
 キカは少し驚いて、目を見開いた。
 あの口下手で、断るという事が人一倍苦手なフィナが。
 きっと大事な用なのだろう。
「ごめんなさい…」
「いや、構わん。また暇な時にでも誘いに来る」
「は、はいっ」
 キカの言葉に、フィナは嬉しそうに頷いた。


「うーわーー! キカ様何気に次の約束取り付けてる!」
「見習いたいものだな」
「…お前別に女には不自由してねーじゃん」
 睨むように言うハーヴェイに、ひょいと肩をすくめて答える。
「お前もだろ」
「……」
「……」
 2人は、まったく同じことを考えた。

 フィナみたいなタイプとはお近づきになれないんだよな…俺…。




「それより、約束があるというならばこんなところで泣いている場合ではないだろう」
「あ…」
「何より、迎えも来たようだ」
「? …!!」
 キカの言葉に、不思議そうにフィナが首を傾げたとき。
「お前は来なくて良いって言ってるだろう!」
「俺が行かずに何であんただけ行くんだよ。フィナは俺が守る」
 バタン、と扉を開いてタルとテッドがやってきた。
「だから俺は何もしてないって言ってるじゃないか!」
「信用ならないんだよ、あんたなんかむっつりそうだし」
「むっつ!!」
 言い合いながらも、それは先ほどのような酷い内容ではなく、フィナは少し、安心した。
「…」
「やれやれ、お前も大変だな」
「…いえ」
 フィナは、キカに酷く穏やかに微笑んだ。キカは満足そうに頷いて、またな、と言って歩いて行ってしまった。
「…」
 ゆっくりと、しだいに早く。フィナは2人に駆け寄った。




「そこで盗み聞きをしているの」
「「!?」」
「バレているぞ」
「…あ、いや、俺たち別に盗み聞きしようだなんて」
「全然思ってません、キカさま」
「ふん。一歩私がリードだな」
「……」
「……」
 ハーヴェイとシグルドは、頑張ろう。と心に誓った。






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