フィナは、ゆっくりと目を開けた。 「…」 朝の早いフィナは、むくりと起き上がると身支度を整えて、部屋を出た。 船内は、いつもの喧騒が嘘のように静まりかえっている。 朝はいつもこうだ。 そしてフィナは、そんな船内を歩くのが好きだった。 今日も今日とて、ふよふよと赤いバンダナを揺らしながらフィナは歩いていく。 サロンで、ルイーズがいつもオレンジジュースを出してくれ、それをありがたく飲んでフィナは甲板に出る。 サアァッと流れる風はいつも心地よくて、扉を開けたとたんに入り込む清涼なそれをゆっくりと吸い込む。 「…、」 うん、今日も良い天気。 フィナはこっそりと微笑んだ。 今日はどうしようか…遺跡に行ってみようかそれとも…。 ううん、と悩みながら、フィナは甲板を回り終えて、サロンへ戻る。 「よーフィナ。おはようさん」 「おはよう」 ふああ、とあくびをしながら挨拶してきたタルに挨拶を返す。 「お前相変わらず早起きだなー」 「ん…」 もう、クセみたいなものなんだ、とフィナは言った。 「ま、朝は気持ち良いしな!」 グッと伸びをするタルに、クスリと笑う。騎士団にいたころから、全然、変わってない。 「っと、今日はどうするんだ?」 「遺跡…」 「遺跡かーあそこ結構手ごわい奴らも出るからなー」 腕組みをして言うタルに頷く。そう、油断はできないところだ。 だけれど、だからこそ、レベルがあがる。 「ま、フィナは俺が守ってやっからな」 カラカラと笑って、タルはぐいぐいとフィナの頭をなでる。 いつもそう言うタルにフィナはくすぐったそうに頷いた。 遺跡へ行くメンバーは、フィナ、タル、テッド、アクセル。そして、サポートとして医者のユウ。 やる気満々のアクセルと、仕方がないから、と言った態度をとるテッド。 ユウは始終、怪我をしないように気をつけてください、と言っている。 ビッキーのテレポートで遺跡まで飛んで、フィナたちは早速中へともぐっていった。 「やっぱアレだよな、ここ。暗くて好かネェ」 アクセルが嫌そうにそう言って、タルがまあな、と同意する。 「辛気臭いしなぁ。トラヴィスのヤツはよくこんなとこ居たよな」 「トラヴィスってアイツだろ? 猫んとこいる」 「そうそう。間違えて入って、俺びっくりしたぜ」 「トラヴィスさん、良い人だよ?」 フィナの言葉に、タルは悪いやつだとは思ってないさ、と応えた。 「猫がよっぽど好きなんだろうな、あいつ」 「テッドさんも猫、好き?」 「…別に」 テッドは興味なさそうに答えた。フィナはそんなテッドを見ながら、首を傾げる。 「…嫌い?」 「…嫌いじゃ、ないけ、ど…」 「?」 もごもごと言うテッドに、フィナは逆に首を傾げた。 「テッドさん?」 「…ど、どっちだっていいだろ!」 プイッとそっぽを向いてしまったテッドに、フィナはシュンとうなだれた。 「まぁまぁ、猫もいいけど犬もいいぞー」 ははは、と笑いながら、タルはうなだれたフィナの頭をなでる。 「フィナはどっちかってっと、犬だよな」 アクセルが言って、タルがまぁなあ、と頷く。 「なんで?」 不思議そうにきょとんと見上げるフィナに、そういうところがな、と笑う。 「??」 「…確かに」 ポツリとテッドが言って、フィナがテッドを見る。 「アクセルさんは、猫ですよね」 「だろーな! ははは、俺も思う」 ユウの言葉に、アクセルは自ら認めた。フィナはジィっとテッドを見ていたが、テッドはこっちを向いてくれなかった。 「自覚あるなら、もう少し自重してはどうです」 はあ、とため息をついて、ユウは言う。何を隠そうアクセル、訓練所に1人赴いては「怪我したから治してくれー」とユウのところへ来るのだ。 「いやぁあんた腕いいよなぁ。この戦終わったらナ・ナル来いよ」 ユウの背中をバンバンと叩きながら言うアクセルに、ユウは痛いです、と言って眉根を寄せた。 「テッドさんは?」 見上げながら問うてくるフィナに、タルはフィナのバンダナの端で遊びながら考える。 「んー、そうだなぁ」 「猫だろ!」 「猫でしょう」 「な、何でだよ」 アクセルとユウ、2人同時に言われて思わずテッドはムッとする。 「だってな〜」 「あれだけの人の中にいて、ナワバリをしっかり持ってるじゃないですか」 「お前、ちっこいし」 「ちっこくない!」 言い返すテッドの頭をわしゃわしゃとかきまぜて、アクセルは豪快に笑う。 「そーゆーとこも猫だっての」 すぐに牙をむいて、こっちに来るなと警戒する。 「猫…」 「…フィナ、その想像は捨てろ」 タルは、フィナが何を考えているか解って、バンダナを引っ張って思考をストップさせる。 「…かわいい」 「!?」 ポツリとフィナが呟いた言葉に、テッドが驚いて目を見開く。な、何言ってるんだ!? 「っと、話はまた後にしたほうがよさそうだな」 ズラッと大剣を抜いたアクセルに、フィナたちも前を見る。 滅ぶことを忘れた亡者が、3人。 「…」 フィナは、双剣をシャンッと抜き放って構えた。テッドが矢を矢筒から取り出し、キリリと狙いを定める。 ユウは、邪魔にならないように隅によけた。 のんびりと、タルが剣を抜いたのを合図に、テッドが一矢放った。 「っ」 続いてフィナがもう1人に攻撃をしかけ、 「ウラァ!!」 アクセルも別の亡者に攻撃する。 カクン、と後ろに揺れるが、亡者は倒れはしなかった。 「チッ」 ザッと後ろに下がり、入れ替わりにタルが攻撃する。 「ハッ」 肉を絶つ音ではなく、ガギッと鈍い音がした。 声すら上げずに、1人亡者が地に伏した。 「あと2人か」 矢を取り出しながら、テッドが呟く。 「ま、楽勝だろ」 大剣を重そうに持ち直しながら、アクセルは亡者の攻撃をよけた。 しかし、アクセルがよけた、そのわずかな緩みを、亡者は見逃さなかった。 後ろに下がった亡者と入れ替わりに、もう1人がするりとアクセルの横を通って。 「っ、ユウ先生っ」 「えっ」 闘う術を持たない、ユウめがけて剣を振り下ろそうとした。 「!!」 ギィンッという鈍い音がして、それからガランっと何かの落ちる音がした。 「っ、」 フィナは、左の剣で亡者の剣を受けようとしたのだが堪えきれず剣を落としてしまった。 だが、フィナはすかさず右の剣で亡者に反撃した。 あまり深い傷を与えることはできなかったが、亡者はその場から飛びのいた。 「…」 「フィナさん!」 ユウの声に振り返ることもなく、フィナは前へ走り出た。 「っ、テッドさん!」 「ああ!」 テッドは矢を2つ取ると、続けざまに放った。 どちらも狙いを違わず、亡者を撃つ。 残った1人を、フィナが素早い一撃を食らわせて、終わらせた。 「…」 ふう、と息を吐いたフィナの右腕を、ガッとタルがつかんだ。 「フィナ!」 「ァッ」 「バカ!」 「っ…タル…」 つかまれた腕の痛みを伝えるよりも先に、フィナはお日様に似た温もりに包まれた。 「あーもー、無茶すんなよー」 はあ、と息を吐きながら、タルはフィナの頭や背中をさすりながら言う。 「ごめ…」 心配をかけてしまったのだと思って、フィナはくぐもった声で返す。 「怪我、ねぇな?」 「うん…」 大丈夫、と返してフィナは目を閉じた。 「…あのさー、俺らいるんだけど」 「聞こえてないんじゃないか」 「…怪我は、ないみたいですね…。良かった…」 ホッと息を吐いたユウに、アクセルは珍しくシュンとなって謝った。 「悪かった、ユウ先生。俺が油断したから」 「いえ、怪我も何もしてませんから」 「…けど、怖かっただろ」 「…まあ、そりゃ、少しは」 情けないけれど、とユウはため息をついた。少しは、何かならった方がいいかもしれない。 「ま、今度からはぜってぇ大丈夫だから! 安心してくれ!」 「…はあ」 そんな明るく言われても安心できない気がする。けれど、きっと本当に大丈夫なのだろう。 ユウはアクセルの人となりを少なくとも知っているから、頼りにしてますよ、と応えた。 「任せとけ!」 ドンッと胸を叩いて言うアクセルに、テッドがため息混じりに呟く。 「どうでもいいけど、あの2人いい加減どうにかしろよ」 「お前、そんなこと言うならどうにかしてみろよ」 「…できるなら言ってない」 3人の視線の先では、まだタルがフィナをギュウッとしていた。 「タル…」 「ん?」 「そろそろ…進まないと」 「ん〜」 「?」 「もうちょっとだけ、ダメか?」 「…」 タルにそう言われて、フィナに断れるはずもない。 恥ずかしそうに、フィナはタルの胸に顔をうずめた。 「今度はちゃんと、守ってやっからな」 「ん…」 「なあ…おいてくか」 「まずいだろ、さすがに」 「瞬きの手鏡を持っているのは、フィナさんですよ」 「……」 「……」 「……」 アクセルとテッドとユウは、そろってため息をついた。 |
朔さんが書いてくださったラブいタル主(w こちらに掲載OKという事で・・・! ご覧下さい、この人目を憚らぬイチャつきっぷりw やはしタル主は素敵・・・・!!! 9/20/Mon------キノ |
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